「筋トレを始めたのに体重が減らない!」
そんな悩みを持っていませんか? その原因は“ホメオスターシス”かもしれません。
「ホメオスターシス? 何それ?」 ダイエットと密接に関わる人体のシステムでありながら、なかなか聞き馴染みのない“ホメオスターシス”という言葉。今回は、フィットアゴー!の開発者である川人将裕と長谷川駿介が、ダイエットの最初の壁として立ちはだかるホメオスターシスについて解説します。
川人 将裕(かわひと まさひろ)
フィットアゴー!開発総指揮。世界クラスのアスリートも担当するトップトレーナー。早起きが苦手でたまにジュースも飲むけど、体重の増減は自由自在。
長谷川 駿介(はせがわ しゅんすけ)
フィットアゴー!のサービスデザイナー。ほぼ毎日ジムに通う筋トレガチ勢にして、栄養バランスが完璧な弁当を追求する意識高い系弁当男子。
ホメオスターシス=生体恒常性
体を一定の状態に保つ自律神経システム
ダイエットを始めたはいいけれど、なかなか体重が落ちなくて、諦めてしまう人が多くいるそうですね。実際、僕もボディメイクを始めてすぐの頃は、トレーニングをすれどもすれども体重に変化がなく、悩んだのをよく覚えています。
そうなんです。いくら正しく筋力トレーニングや食事の管理に取り組んでも、最初のうちはホメオスターシスによって体重が落ちない。誰だっていくらやっても成果が出ないのでは嫌になってしまうものですよね? それがダイエットの最初の壁になっているケースが多く見られます。
そもそもホメオスターシスとは、どういったものなのでしょう? 直訳すると、生体恒常性。体の状態を一定に保つための生体機能ですよね
はい、自律神経のシステムですね。例えば、人体の体液濃度は中性に近い弱アルカリ性に保たれています。しかし、食べ物や酸素量の影響によって、酸性やアルカリ性に傾くことがあって、それを弱アルカリ性に維持することもホメオスターシスの働きの1つです。
なるほど。体液の性質を一定に保ってくれているんですね。
もう少し詳しく話すと、液体の性質の単位として「pH(ペーハー)」というものがあって、人体は体液を7.4pHで保つことをずっと行なっており、これを「酸塩基平衡」と言います。pHは0から14まであり、0に近いほど酸性、14に近いほどアルカリ性となり、どちらに傾いても体調に悪影響を及ぼすんです。
ダイエットやボディメイクに取り組む人からすると、ホメオスターシスって悪者のように思われがちですが、実際は生命の維持に不可欠な生体システムなんですね。
その通りです。他にも怪我をした傷を治したり、ホルモンの分泌量を調整したりするのもホメオスターシスの一部ですし、まず前提として「ホメオスターシスは自分を助けてくれる機能」であることを理解してもらいたいですね。
太っている状態であっても身体は維持しようとする
「痩せる」にシフトチェンジするためには?
では、体を一定に保つ機能であるホメオスターシスが、ダイエットの最初の壁になるというのは?
太っていた期間が長かったり、それまで運動習慣が全くなかった人は、その状態を標準であると体がインプットしてしまっているんです。だからトレーニングを始めても、ホメオスターシスが機能して、それまでの当たり前の状態、つまり恒常性を維持しようとするんですね。
その結果、痩せないという現象が起きるわけですか。自分の想いとしては痩せたい、鍛えたいと思っても、「あれ? いきなり運動量が増えたぞ。このままだと脂肪がなくなってしまうから、溜め込まなきゃ!」という具合に、体が変化を拒むような。
なので、ボディメイクやダイエットの最初の段階では、「痩せる」の前に、「ホメオスターシスがインプットしている身体の恒常性を塗り替える」というフェーズを挟まなければならないんですね。運動をすること、脂肪を落とすこと、低カロリーで過ごすことなどを身体に少しずつ刷り込んで、はじめて体重が減っていくんです。
体重を減らすための準備期間が必要なんですね。でも、世間では摂取カロリーと消費カロリーの収支をマイナスにすれば痩せていくという考え方が一般的ですよね。ホメオスターシスを度外視した考え方がかなり広まっているので、体重が減らないことへの戸惑いも大きそうですよね……。
「今は生体システムの影響で痩せないだけなんだ!」と理解して取り組んでもらいたいですね。ホメオスターシスを塗り替える期間だからといって何か特別なことをする必要はないので、とにかく地道にやっていってもらえたら。
どうせ最初は減らないのだから、始めて2ヶ月までは体重計に乗らないくらいの気持ちでもいいのかな(笑)。
減らない事実を突きつけられるとモチベーションが下がりますし、それもいいかも(笑)。
ホメオスターシスの塗り替え期間は1〜2ヶ月
3ヶ月目からは確実に体重が減っていく!
一方で、太っている人がダイエットを始めると最初にガクンと体重が減る、みたいなことも聞きますよね。
ありますね。ただそれっていうのは水分が減っているというだけのことなんですね。ダイエットをするとなったら食事制限をするでしょう。特に糖質カットをメインにする人が多いと思いますが、糖質の摂取が減る分、体内の水分も少なくなるという。
糖質って多くの水分を含んでいるんですね?
糖質はグリコーゲンとして体内に貯蔵されるのですが、グリコーゲンはその質量に対して3〜4倍の水分と結びついているんですよ。
ダイエット初期の体重の下げ止まりっていうのは、そういうメカニズムだったんですね。
太っている期間が長い人は、その期間の分だけホメオスターシスが強く定着しているので、むしろ慎重に見定める必要があるかと思います。
では、ホメオスターシスを塗り替えて、痩せるフェーズに至るまでにはどれくらいかかると思っておけばいいですか?
大体1ヶ月から2ヶ月ですね。この期間は体重があまり変化しないと思っていていただいて良いと思います。逆に、3ヶ月目に入れば、間違いなく体重が落ちていく方向に向かうので、安心していただきたい!
思えば僕もボディメイクを始めて3ヶ月目から、まるで弁が外れたようにスルスルと体重が落ちていきました。それこそ摂取カロリーと消費カロリーの収支計算の通りに落ちていって感激しましたよ。
身体が「痩せる」を恒常性としてインプットしてしまえば、取り組んだ分の成果は確実に出ます。一方で、トレーニングに取り組みさえすればすぐに痩せる、鍛えられると、まるで魔法のように思われている方もいて……。
身体に一朝一夕はない、コツコツと積み重ねていくことがダイエットやボディメイクの唯一のコツですね。
身体は全て習慣でできています。例えば早起きだって、1ヶ月くらい続けたくらいではダメで、2ヶ月、3ヶ月と継続してようやく早起きが身についていくでしょう。ダイエットも同じことですから、じっくり地道に良い生活習慣を送っていきましょう!
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