うつ病を筋トレで防止?運動によってメンタルが前向きになる科学的根拠

健康

「気持ちいい〜〜〜!」運動中や運動後に全身を包む爽快感。体を動かすと心が前向きになれるという人が多いのではないでしょうか?

この精神状態の変化は、決して運動=体に良い行為をしたことによるプラシーボ効果ではありません。科学的に立証されたれっきとした身体反応なのです。

では、運動は体内にどのような作用を及ぼし、精神状態に影響を与えているのでしょうか? フィットアゴー!の開発者である川人将裕が、「神経伝達物質」と「自律神経」の観点から解説します。


川人 将裕

フィットアゴー!開発総指揮。
お気に入りのリラックスツールはYogiboのソファ。

長谷川 駿介

フィットアゴー!のサービスデザイナー。
お気に入りのリラックスツールはadidasのスウェットパンツ。


運動によって幸福感につながる神経伝達物質の分泌量が増加

トレーニングやランニングをしたあとに、気分が前向きになるような感覚を誰しも経験したことがあると思います。実際のところ、運動は精神に作用を及ぼすのでしょうか?

運動による爽快感が及ぼす精神への好影響は、科学的に立証されていますよ!その作用は複合的ですが、今回は「神経伝達物質」と「自律神経」の二点から解説しますね。

立証されているんですね! 神経伝達物質とは、なかなか聞き馴染みのない言葉ですがどういったものでしょうか?

アドレナリンやセロトニンって、聞いたことがありますよね? それらを総じて神経伝達物質と呼び、その名の通り神経から神経への情報伝達を担っています。

神経の間で、脳からの指令などの情報の受け渡し役をしているんですね。

その神経伝達物質の分泌量が、運動によって増加することがわかっています。

重要な役割を持つ物質であることはよくわかりましたが、精神とはどのような結びつきが?

運動によって分泌される神経伝達物質には、先ほどのアドレナリンとセロトニンに加え、オキシトシン、セロトニン、ドーパミン、エンドルフィン、ノルアドレナリンがあり、これら全てが精神を上向きにする作用を持っているんです!

運動によって分泌された神経伝達物質が、幸福感を与えてくれるんですね。しかも7種も……!

ドレナリンは興奮状態に、逆にセロトニンは安定状態に、といった具合に、それぞれが異なる角度から心に働きかけてくれます。

一気に分泌できてお得ですね(笑)。

分泌されるタイミングも神経伝達物質によって差があって、例えばアドレナリンなら1RM(1回だけ挙げられる重量)のスクワットをすれば、その瞬間にドバッと出ますよ!

重いウェイトを挙げた瞬間の、気持ちがバキバキになる感じってそういうことだったのか……。

なんだか無敵な感覚になりますよね(笑)。

自律神経のバランスが整うことで沈んだ精神が正常に

次に自律神経による作用をうかがえますか? そもそも自律神経というのは、無意識下での臓器や身体の反応を司っている神経ですよね。

その通りです。まず前提として、自律神経が交感神経と副交感神経とで、臓器の「拮抗支配」をしていることを理解してください。

拮抗支配?

綱引きをイメージしてみてください。交感神経チームと副交感神経チームが互いに綱を持って、引っ張り合っているような状態です。

なるほど。よく「副交感神経を優位にしましょう」と言われますが、これは副交感神経チームの引っ張りを強くしましょう、ということなんですね。

はい。交感神経と副交感神経はスイッチのように切り替えるものではなく、6:4に比率で交感神経が優っているときがあれば、逆に3:7で副交感神経が優っているときもあるなど、状態によって推移していくんです。

では、運動によってどのような状態の変化が生まれるのでしょう?

気分が沈む、活力が出ないといった精神状態は、主にリラックスしているときに優位になる副交感神経が強すぎる状態と言えます。運動には交感神経を優位にする働きがあるため、力の拮抗のバランスを取り戻すことができるんです

運動によって精神状態が上向くというよりは、副交感神経が優位になりすぎていることで下がってしまった精神状態を、正常に戻すことができるんですね。

わかりやすさのためにかなりシンプルに説明しましたが、自律神経はほとんどの臓器において別個に拮抗支配を行っています。体内では、それらが複雑に絡み合っていることを理解しておいてください。

脳は交感神経が優位だけど、胃腸は副交感神経が優位、みたいなことが起きているわけですか。

とは言え、それら全てと向き合っていたらキリがない。全体のバランスのために一つ言えることがあるとすれば、自然な人間らしいサイクルで生活することが、自律神経の安定につながるということでしょうか。

自然な人間らしさのために現代人が取り組むべき運動の補完

「自然な人間らしいサイクル」とは、シンプルなようでいて難しいですよね。仕事の内容によっても生活習慣は違ってきます。

やはり人間も動物である以上、昼に活動して夜には休むのが自然なのではないかと思いますね。

まだ文明が発展していない原始の時代は、全員が当たり前にそういう生活をしていたはずですよね。太陽が出ている間に活動をして、日没後は明日に備えてしっかり休む、という具合に。

昼には交感神経が優位になり、夜には副交感神経が優位になる、というサイクルがはっきりしていたことでしょう。

神経伝達物質の面でも、アドレナリンやドーパミンといった気持ちを高揚させる物質と、セロトニンやエンドルフィンといった心を安定させる物質の分泌のバランスもうまくとれそうですよね。

狩りや農耕といった運動を習慣的に行っていた原始の人類は、幸福感にあふれていたかもしれないですね(笑)。

逆に言えば、文明が進歩して生活が便利になった現代は、原始の時代を軸にすれば自然な人間らしいサイクルを維持しづらい環境と言えませんか?

確かに活動しなくても食に困らず、夜もいつまでも起きていられる生活は、サイクルが崩れやすいですよね。

はい。現代人が抱える心の落ち込みは、運動不足に起因していると考えずにはいられません。その意味では、うつ病も現代病の一つと言えそうです。

面白い視点ですね。運動を伴う活動時間が減少したことで自律神経のバランスが崩れ、神経伝達物質の分泌も落ち込み、どんどんと気持ちが沈むスパイラルが起きているかもしれません。

その結果として、精神を病むリスクが高まってしまう。便利な現代に暮らしているからこそ意識的に運動に取り組み、本来の人間らしい生活のための補完をするべきなのではないかと思います。

その通りですね。心のためにも運動習慣を身につけてもらいたいです!

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