「トレーニングでは筋肉を意識することが大事!」こんな言葉を聞いたことはありませんか?
同じトレーニングでも、使っている筋肉を意識しているか・していないかの差で、効果に大きな違いが生まれるとされており、トップレベルのボディビルダーともなれば意識だけで、加重せずともトレーニングを成立させてしまうほど。
とはいえ、一見すると運動とは関係のない「意識」が、なぜそこまで重要なのか疑問に思ってしまうのも無理からぬこと。そこで、今回は意識が及ぼす筋肉への作用を、フィットアゴー!の開発者である川人将裕と長谷川駿介が解説します。

川人 将裕(かわひと まさひろ)
フィットアゴー!開発総指揮。キングダムで好きな武将は王騎。

長谷川 駿介(はせがわ しゅんすけ)
フィットアゴー!のサービスデザイナー。キングダムで好きな武将は桓騎。
トレーニングにおける「意識」=筋肉を意図の通りに動かすこと

トレーニングにおいて重要視される意識ですが、ただ「意識が大事」と言われても理解が難しいですよね。「狙った筋肉を狙った通りに動かす」と言い換えても良いかもしれません。

図的に筋肉を動かす、ということですね。お笑い芸人のなかやまきんに君の、左右の大胸筋を交互にピクピクと動かす筋肉ルーレットなんて、まさに「意図的に筋肉を動かせている」状態と言えます。

図の通りに筋肉を動かせることが良いことなのは理解できるところですが、トレーニングの効果にまで影響を及ぼすというのは、どのような作用が働いているのでしょうか?

意識的に筋肉を動かすことには、大きく3つのメリットがあると私は考えています。1つ目は、該当部位(意識している筋肉)に血流が集中すること。2つ目は、乳酸濃度が上昇すること。3つ目は、筋肉の使用率が増加すること。

意識のメリット①血流の集中

血流の集中とは、どういった状態でしょうか?

をかけることで、その部位に血液を集め、筋肉の圧力によって血流を制限する状態です。例えばアームカール(ダンベルを持って肘関節を屈曲させる動作)をする際に、その動作で使用する上腕二頭筋を意識することで、流れてきた血液を留めておけるんです。

肉を力ませることで、血流を塞ぐわけですか。加圧トレーニングを自身の筋肉で行うようなイメージで、血流を集中させていくんですね。

そして、その力みを弱めると塞がれていた分、ドバッと血流が促進されると私は考えています。

なるほど。では、血液を集中させることでトレーニングの効果はどのように高まるのでしょうか?

それは2つ目のメリット、乳酸濃度の上昇に関わってきます。
意識のメリット②乳酸濃度の上昇

そもそも乳酸とは、糖質を筋肉のエネルギーに変換する際に分泌される代謝物ですよね。蓄積されることで、筋肉を動かしづらくなる要因とされています。

はい。メリット①の血流の集中によって、血中の乳酸も蓄積されて濃度が上昇していきます。

乳酸の濃度が上がるのはトレーニングの阻害につながりそうなものですが?

人体には弱アルカリ性でありたいとする性質があるのですが、乳酸濃度が高まると酸性に傾いてしまいます。

人体にとって良くない状態ですよね。

なので、脳は酸性から弱アルカリ性に回復させようとして、成長ホルモンを分泌します。その成長ホルモンが、筋合成を促進してくれる、というメカニズムです。

意識することで乳酸濃度が上昇して、成長ホルモンが分泌されることで筋合成ができる、と。それは効率的ですね。
意識のメリット③筋使用率の増加

では3つ目のメリット、筋使用率の増加について教えてください。

まず前提として、筋肉の仕組みについて理解してください。筋肉は多数の筋繊維で構成されており、その1本1本の出力は0と1しかありません。

スイッチのオンとオフのように、筋繊維1本あたりでの出力の調節はないんですね。

その通りです。例えば上腕二頭筋の筋繊維が1000だとして、2kgのダンベルを挙げるために必要な筋繊維が300だとしたら、残りの700はオフの状態で動作するわけです。

筋肉を意識することで、その数を増やしていけるのですか?

はい。300で足りるものに対して、400や500までプラスアルファで筋繊維を動員できるようになるんです。

それはめちゃくちゃお得ですね!

トレーニングでは筋繊維を余すことなく動員することが大事だとされていて、そのために回数を重ねていくのですが、意識をできているとより早く使い切れるんです。
筋肉を意識するためのトレーニング方法

意識が効果的なことは理解できても、実践するのは大変です。どのように身につけたら良いでしょうか?

まず筋肉をイメージするために、触ることから始めましょう。アームカールなら、動作しながら二の腕に触れると、上腕二頭筋を認識できるはずです。この方法をセルフタッチと言います。

スポーツ観戦など見ていると、アスリートがプレー前に体をなでたり叩いたりしていますよね。

おそらく無意識的な動作ですが、筋肉に触れることで動かしやすくなることを体験的に知っているんです。

意識を身につけるためのトレーニングでは、軽いウェイトを使った方がいいですか?

重すぎると意識できないので、軽いウェートでゆっくりと動作すると良いでしょう。反動なしで、2カウントで挙げて、3カウントで戻すくらいが最適だと思います。

ゆっくりな動作なら、筋肉の動きも感じやすそうですね。


関節を使わないアイソメトリックというトレーニングも意識を鍛える方法としてオススメです。代表的なのは、胸の前で両手のひらを合わせて、グッと互いに押し合う動作。大胸筋が力むのを感じられるはずです。

トレーニングではないですが、筋力を伸縮させるストレッチも、筋肉を知覚するという意味では効果的そうですね。

意識はとても奥深くて、レベルを上げていけば全身を効率的にトレーニングできるようになるので、ぜひトライしてみてください。

ボディビルの大会を見ると、ポージングだけで見事に筋肉を隆起させていますが、あれも意識の賜物と言えるでしょうか?

意識だけでトレーニングしているような状態ですね。究極的な話ではありますが、トップレベルになるとダンベルも自重も使わず鍛えられるんです。

それだけの意識のレベルを持つ人が加重して鍛えていると思ったら、あの肉体も納得ですね。

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