マッチョは不健康!?筋トレで風邪をひきやすくなるメカニズム

健康

「ねえ知ってる? マッチョってめっちゃ鍛えてるくせにすぐ風邪ひくらしいよ……」 

スポーツやトレーニング界隈でまことしやかに囁かれるこの噂。驚くなかれ、科学的に証明されたれっきとした事実なんです。引き締まった体はいかにも健康そうですが、なぜ体調を崩してしまうのでしょうか? その秘密は、人体を守る免疫機能にありました。 

トレーニングによって風邪を引いてしまうメカニズム、そして健康的に体を鍛えるためのコツを、フィットアゴー!の開発者である川人将裕と長谷川駿介が解説します。 


川人 将裕(かわひと まさひろ)

フィットアゴー!開発総指揮。最近のお気に入りコンテンツは「THE FIRST SLAM DUNK」。

長谷川 駿介(はせがわ しゅんすけ)

フィットアゴー!のサービスデザイナー。最近のお気に入りコンテンツは「ぼっち・ざ・ろっく!」。


激しく運動する人の風邪リスクは運動しない人のおよそ倍 

「マッチョは風邪をひきやすい」という話は、割と昔から噂されていることですよね。私は、高校生くらいから何となくそんな話を聞いていた記憶があります。そもそも、これは事実と考えて良いのでしょうか? 

体を鍛えているのに風邪をひくなんておかしな話だと思う方もいらっしゃるかもしれませんが(笑)、これは事実です。 

「健康になりたくて運動しているのに!」と嘆いている人がいるかもしれません……(笑)。どのような要因で風邪を引いてしまうのでしょうか? 脂肪が不足することで体が冷えやすくなる、とか?

脂肪には魔法瓶のように保温する作用があるので、要因のひとつとして挙げることはできます。ほかにもホルモン分泌や自律神経の乱れなどが考えられますが、風邪をひきやすい原因のメインになるのは免疫であると私は考えています。 

免疫ですか。てっきり運動によって機能が高まるものかと思っていました。 

いや! それはその通りで、適度な運動は免疫を向上させることがわかっています。しかし、マッチョを目指すあまりに運動強度が過度に高まってオーバートレーニングになってしまうと、体にストレスがかかり、免疫機能が低下するのです。 

適度であれば良いけれど、過度になるとリスクになる。なんであれやり過ぎは良くないですね。 

興味深いデータがあって、ほとんど運動しない人と、適度に運動する人、激しい運動をする人を比べたとき、最も風邪をひきやすいのは激しい運動をする人で、そのリスクはほとんど運動しない人の倍ほどもあるというんです。 

ほとんど運動をしない人よりもリスクが高いとは……。

このデータの「激しい運動」は体を極限まで追い込むアスリートレベルの運動強度を指しているので、一般のレベルとはやや乖離があります。とはいえ、趣味や健康増進のために運動をするトレーニーであっても、体に負荷をかけ過ぎれば免疫は低下してしまうので注意してもらいたいです。

最近ではアマチュアであっても、フィットネスジムで自分を追い込むほどトレーニングをする人も多いですからね。

例えば、長谷川さんとかね(笑)。

気をつけます……(笑)。

抗体「IgA」の機能が低下することで風邪をひきやすくなる 

免疫と一口に言っても、その機能や種類は多岐にわたりますよね。オーバートレーニングは、どのような免疫の低下を引き起こすのでしょうか?

低下するのは主に、免疫グロブリンの活動です。

体内に入った異物を除去する機能を持つ抗体のことですよね? 

そうです。免疫グロブリンには5種あるのですが、なかでも目、鼻、口といった粘膜を主に守っているIgAが特に打撃を受けるので厄介です。

まさにウイルスや細菌の侵入経路ですね。 

人体の第一次防衛ライン、いわばウォールマリア*を守っているのがIgAなんです! 

*漫画「進撃の巨人」で最初に破壊される壁 

ウ……ウォールマリア。重要性を痛いほど理解できました。 

第一次防衛ラインが崩れたら、細菌やウイルスは入り放題。無力化できず侵入を許すことで風邪を引いてしまう。これが「マッチョは風邪をひきやすい」のメカニズムです。

健康のためにもIgAを正常に機能させながらトレーニングに取り組みたいところですが、具体的に適度な運動とは、どの程度のものを指すのでしょうか? 

生労働省の指標では、30分間のジョギングや筋力トレーニングに週2回取り組むのが適度とされています。

しっかりトレーニングをしようと思ったら、ちょっと物足りない量ですね。 

そもそも運動強度はその人の筋肉量や年齢によっても変わってくるので、一概には言えないもの。運動不足の人がいきなりハードにトレーニングしたら当然免疫は下がりますし、体が出来上がっている人であってもアスリートレベルに追い込めば低下します。 

無理せず、自分にとって適正な習慣づくりをすることが大切ですね。 

特にトレーニングのビギナーは張り切りがちですが、そのせいで体調を崩して、運動をしなくなってしまってはもったいない。少しずつ運動習慣をつけていくのがベストで、そのためにフィットアゴー!は最適なんです。それから少しずつ、強度を上げていってもらえたら。 

免疫を損なわずに体を鍛えるなら“筋トレの腹八分目” 

運動習慣が身についたら、次はフィットネスジムで本格的にボディメイクしたいと思うもの。その段階では、筋肥大のためにある程度の強度があるトレーニングが必要になってきますよね? 

そうですね。そのために生活のいろいろな面を犠牲にして日夜、体を追い込み続けているトレーニーもいます(笑)。ただ免疫の観点ではこれまで話してきた通り、追い込みすぎるのはNGです。免疫とボディメイクのバランスをとるためにも、筋トレの腹八分目を意識してもらいたいですね。 

余力を残して、少し手前でやめておくということでしょうか?

トレーニーの多くは「限界が来るまでやる」という考え方で取り組んでいるでしょう。 

例えばベンチプレスなら、10RM(ギリギリ10回上げられる重さ)で、10回×3セットを行う、というような方法ですね。 

それを、「あと2回は上げられそうだけどやめておこう」とするのが、筋トレの腹八分目。免疫のことを考えるなら、それが適正な回数と言えます。 

私は、分割法も良いんじゃないかと思います。 

1日に全身のトレーニングを詰め込まず、鍛える部位を日によって分ける方法ですね。

週に2回のトレーニングをするなら、1日は下半身だけ、もう1日は上半身だけと、負荷を分散させたら良いのではないかと。

トレーニングの効率化にもつながりますよね。

やっぱり多少は「限界まで鍛えたい」っていう欲求も出てきてしまうので、1日につきメインとなる1種目を決めて、その種目だけはギリギリの回数まで力を出し切るっていう方法もアリでしょうか? 

トレーニングにおいて「やりきった感」は継続するモチベーションになるので、決して悪くはないです。ただ、くれぐれも無理はしないように(笑)。 

気をつけます……(笑)。

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